「母性」を咀嚼し、「少女」を生き続ける、一匹の蚕。写真家の花代さんのこと。
落ち葉が敷き詰められている、
詩が朗読されている、
鳥かごに石膏のマスクとドライフラワー、
溶け落ちるヌテラ、
サンローランの赤いハイヒール、
使い古したバレエシューズ、
水色の小窓、
娘を描いた?娘が描いた?ドローイング、
ドイツ公共交通のパスのようなもの、
寺山舞台のチラシ、
手作りのカセットテープ、
映写された写真、
誰かの手紙、
ピンクのスパンコール、
手描きの蝶々、
小さな鼓、
不気味なグローブ。
吐き出されたモノクロの生糸に絡め取られた記憶、
アニエス・ベーからの花束さえも取り込まれて。
透明な空間に織り上げられたひとつの繭=彼女だけの不思議な物語。
とても切ないのに、なぜか美しい。
摑みどころがなくて、はっきりと見ることができないのだけれど、どうしても惹き寄せられてしまう、花代さんの「世界」。
彼女は、夢や虚構を現実に着地させる力を持っているのではないか、とふと思った。
会場で購入した写真集『かげろうのやうに』+81publishers発行。